空から見てみよう

日々感じた事のひとりごと

父の思い出 vol-2

父は後年認知症になった。徐々に色々な事が分からなくなっていった。

私は海外に住んでおり、一時帰国する毎に認知の度が進んでいるのを感じていた。

そうして何年か過ぎた後、ある日父が肺炎によって救急病院に搬入され、命の危険があると家族から連絡があり、緊急に帰国した。

 

私は毎回日本を発つ時にそういう状況になる覚悟はしていたが、いざそうなると本当にショックだった。ただただ父に会えますようにと願い帰国した。

父は何とか一命を取り留めており、会う事が出来た。私は心から安堵した。

その後リハビリ等で回復に向かった 父は長期療養型の病院に転院した。

日本に滞在できる期間中ほぼ毎日病院に行った。

 

父は私の事をわからなくなっていたので、いつも私が病室に行くと病院のスタッフと勘違いし、私に「おー別嬪さん、いつもおおきに」と言った。

父は訪れてくれるすべての人になぜか別嬪さんと言い続けていたらしい。

その為、いつのまにか父はその病棟のナースから人気者になっていた(笑)。

 

ある時、看護師長が父に会いにきたらしい。

私はその時いなかった。

ここから家族から聞いた話。

 

その方は父を見て、「〇〇さん、私は〇〇です。調子はどうですか?」と聞いた。父はなぜか黙ったままだった。

そして、「〇〇さん、私の事は別嬪さんって言ってくれへんの?」と直球を投げてきた。

父は不思議そうな顔をしたまま、まじまじとその人の顔を見続けていた。

その場にいた家族はちょっとお父さん、何か言わないと気まずいでと思っていたらしい。

そしたら、またその方が更に聞いてきた「〇〇さん、今日はあまり調子が良くないのかな?私も別嬪さんやんな?」と。

 

その質問が終わるやいなや、父は口を堅く一文字にきゅっと結び、首を思い切り横に振ったのだ!!!(笑)。

 

何故その人だけには頑なに別嬪さんと言うのを拒んだのかは謎(笑)だが、人に強制されるのと父が心から感じて言うのとは違うからなのか。

嘘をつけない子供のように。

そんな父が大好きだ。